
「2つの病院で手術を勧められた」「もう手術しかないと言われた」——当院には、そのような状況で来院される方が少なくありません。手術を宣告されたとき、多くの方は深刻な不安と絶望感を感じます。しかし、その判断が本当に正しいかどうかを、一度立ち止まって考えることが大切です。
本記事では、理学療法士として数多くの膝痛患者さんと向き合ってきた経験から、「手術を勧められる状況の背景」「ガイドラインが示す治療の順番」「手術なしで改善できる条件」について、正確にお伝えします。
この記事の内容
「手術しかない」と言われるのはどんなケースか
整形外科で手術を勧められる状況には、いくつかのパターンがあります。
①レントゲン・MRIで「変形が重度」と判断された場合
変形性膝関節症のグレード分類(K-L分類)でグレード3〜4に相当する「骨棘形成・関節裂隙の狭小化・軟骨の高度変性」がある場合、手術適応と判断されることがあります。
②半月板損傷・靭帯損傷がある場合
MRIで半月板の損傷や前十字靭帯の断裂が確認されると、スポーツへの復帰や生活機能の回復のために手術を勧められることがあります。ただし半月板損傷については「保存療法でも良好な結果が得られる」というエビデンスが近年増えています。
③保存療法(注射・薬・リハビリ)を試みたが効果がなかった場合
ヒアルロン酸注射やステロイド注射、薬物療法を一定期間試みても痛みが改善しない場合に「次は手術」という流れになることがあります。ただし、この「保存療法」が本当に適切に行われていたかどうかを確認することが重要です。
手術は最後の手段:ガイドラインが示す治療の順番
日本整形外科学会・日本リウマチ学会が発表した「変形性膝関節症診療ガイドライン」では、治療の第一選択として「運動療法・体重管理・患者教育」が挙げられています。薬物療法やヒアルロン酸注射はその次、手術はあくまでも「保存療法で改善が見られない場合の最終手段」と位置づけられています。
つまり、十分な運動療法(正しい内容・期間・強度)を実施したうえで改善がない場合に、はじめて手術が検討されるべきというのが、ガイドラインの立場です。「レントゲンで変形があるから手術」ではないのです。
手術なしで改善できる条件
以下の条件が当てはまる場合、適切な保存療法によって手術を回避できる可能性があります。
- 安静時(じっとしているとき)の痛みがない・少ない
- 膝の動く範囲がある程度残っている(90度以上曲げられる)
- 片脚立ちが数秒できる筋力が残っている
- 体重が適正体重の1.2倍以内である
- 強い運動療法をまだ受けたことがない
逆に、安静時にも強い痛みがある・膝がほとんど曲がらない・著しい体重超過がある、という場合は手術が適切な選択肢になることもあります。
保存療法として有効な4つのアプローチ
①筋力強化(運動療法)
膝周囲の筋肉、特に大腿四頭筋・ハムストリングス・臀筋群を強化します。筋肉が関節を支える力が強まると、骨・軟骨への衝撃が分散され、痛みが軽減します。スクワット・レッグプレス・椅子からの立ち上がり練習などが効果的です。週2〜3回、3ヶ月以上継続することで効果が出てきます。
②関節のアライメント修正(整体・手技療法)
膝の痛みの原因が「変形そのもの」ではなく、「関節の動き方のクセ・筋肉のアンバランス」にあることがよくあります。整体や理学療法士による手技で、股関節・足首・骨盤のアライメントを整えることで、膝への負担が軽減します。手術では変形は取り除けますが、このアライメントのクセは修正できません。
③体重管理
体重を5%減らすだけで膝の痛みが有意に改善するというデータがあります。体重管理は「手術の代替」として考えると効果的です。食事の改善と水中歩行・自転車漕ぎなどの低負荷有酸素運動の組み合わせが現実的なアプローチです。
④インソール・サポーターの活用
足底のインソール(足底板)を活用することで、歩行時の膝への負担の偏りを修正できます。特に膝の内側が痛い方には「外側ウェッジインソール」が有効とされています。サポーターは不安定感の軽減に役立ちますが、依存しすぎると筋力低下につながるため、使い方に注意が必要です。
手術を選ぶべき・選ばなくていい判断基準
手術を選ぶべき状況
- 6ヶ月以上の適切な保存療法を行っても改善がない
- 安静時にも強い痛みがあり、睡眠が取れない
- 日常生活(歩行・トイレ)が自力でできない
- 膝の不安定感が強く、転倒リスクが高い
まだ手術を選ばなくていい状況
- 痛みはあるが、動けばある程度楽になる
- 筋力強化のリハビリをまだ試していない
- 体重管理・生活習慣の見直しをまだしていない
- レントゲンで変形があるが、日常生活はなんとか送れる
よくある質問(FAQ)
Q1. 手術で人工関節にしたら確実に痛みはなくなりますか?
人工関節置換術は高い除痛効果が期待できますが、「必ず痛みがなくなる」とは言い切れません。術後の痛みが残るケースや、可動域が制限されるケースもあります。また術後のリハビリに数ヶ月かかること、人工関節の耐用年数(15〜20年程度)の問題もあります。手術は一つの選択肢ですが、メリット・デメリットを十分に理解したうえで決断することが大切です。
Q2. 整体で手術が回避できた例は本当にありますか?
はい、実際にあります。「3つの病院で手術を勧められた」という方が、適切な筋力強化と関節アライメントの修正によって、6ヶ月後に手術を受けずに旅行に行けるようになったというケースを当院でも経験しています。ただしすべてのケースで可能というわけではなく、状態の詳細な評価が必要です。
Q3. セカンドオピニオンはどこに行けばいいですか?
整形外科のセカンドオピニオンに加え、スポーツ整形外科・リハビリ専門病院・理学療法士によるアセスメントを受けることをおすすめします。視点が変わることで、異なる選択肢が見えてくることがあります。当院では初回カウンセリング時に「手術を回避できる可能性があるか」の見立てもお伝えしています。
「手術しかないと言われたが、まだ諦めたくない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。現状の詳しい評価と、あなたに合った改善プランをご提案します。
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この記事を書いた人

長山 航大(理学療法士)
整形外科クリニック勤務後、膝痛専門整体として独立。リハビリ10年の経験を活かし、大阪・西中島南方で膝痛の根本原因を追求する施術を行う。Noah Body Conditionセラピスト。