
「膝のリハビリをずっと続けているのに改善しない」——そう感じている方の中に、実は「股関節の硬さ」が根本的な原因になっているケースが多くあります。
膝だけを治療していても改善しないのは、膝と股関節が密接につながっているからです。本記事では、理学療法士として多くの慢性膝痛患者さんを診てきた経験から、股関節と膝の関係・改善しない理由・セルフストレッチの方法について詳しく解説します。
この記事の内容
股関節と膝関節がつながっている仕組み
人の下肢(足全体)は「骨盤〜股関節〜大腿骨〜膝関節〜脛骨〜足首〜足」という一本のチェーンでつながっています。理学療法では「キネティックチェーン(運動連鎖)」と呼び、一部の関節の動きが他の関節に連鎖的に影響することが知られています。
具体的には、股関節の動きが制限されると、その分の動きを補おうと膝関節や足首に余分な負荷がかかります。「股関節で吸収できなかった衝撃が膝に流れる」というイメージです。これが「股関節が硬い人は膝が痛くなりやすい」理由です。
股関節が硬くなると膝に何が起きるか
①歩行時の衝撃が膝に集中する
正常な歩行では、接地の衝撃を足首・膝・股関節の3つで分散させています。股関節が硬くなると、この衝撃分散が機能せず、膝だけで衝撃を受け止めることになります。1日に平均6,000〜8,000歩歩く方であれば、その分だけ余分な負担が膝に積み重なります。
②膝が内側に入る「ニーイン」が起きる
股関節の外旋(外向きに回す)動作が制限されると、歩行や階段昇降の際に膝が内側に入る「ニーイン(knee-in)」という現象が起きます。これにより膝の内側(内側側副靭帯・内側半月板)に過剰な圧力がかかり、内側の膝痛・半月板損傷のリスクが高まります。
③腸脛靭帯(IT band)の緊張が増す
股関節外側の筋肉(大腿筋膜張筋・中臀筋)が硬くなると、その延長である腸脛靭帯(太ももの外側を走る靭帯)の緊張が高まります。これが膝の外側の痛み(腸脛靭帯炎・ランナー膝)の大きな原因になります。
「内股歩き」が膝を壊すメカニズム
内股歩きは股関節の内旋(内向きに回る)の状態です。股関節が内旋すると膝も自動的に内側に入り、膝関節の内側に過剰な圧力がかかります。これが「O脚・膝の内側の痛み・変形性膝関節症内側型」につながる代表的なパターンです。
内股になりやすい原因として多いのは「股関節外旋筋(深層外旋六筋・中臀筋)の筋力低下」です。股関節の外旋筋が弱くなると、歩くたびに内股が強くなり、膝への悪影響が蓄積されます。膝の治療だけをしていても、股関節外旋筋の弱さが残っている限り、同じパターンが繰り返されます。
膝のリハビリだけでは改善しない理由
多くの膝リハビリプログラムは「大腿四頭筋の強化・膝周囲のストレッチ」を中心としています。これらは重要ですが、「股関節の柔軟性・股関節外旋筋の筋力」がセットで改善されないと、根本的な問題は解決しません。
「膝のリハビリを6ヶ月続けたが改善しない」という方のほとんどが、股関節の評価・治療をほとんど受けていないケースです。当院では必ず股関節の柔軟性・筋力・アライメントを評価し、膝と股関節を一体として治療します。
股関節の柔軟性を高めるセルフストレッチ3選
ストレッチ① 鳩のポーズ(股関節外旋・梨状筋ストレッチ)
床に座り、片方の膝を90度に曲げて体の前に置きます。もう一方の足は後ろに伸ばします。上体を前に倒し、お尻の奥(深部外旋筋)にじわっとした伸びを感じる状態で30秒キープします。左右各2セット行いましょう。
このストレッチは深層外旋六筋(梨状筋を含む)を柔らかくする効果があり、股関節の外旋可動域を広げ、ニーインの改善につながります。痛みが出る場合は無理をしないでください。
ストレッチ② 仰向けでの股関節内転筋ストレッチ
仰向けに寝た状態で両膝を立てます。片方の足を反対側の膝に乗せ(いわゆる「4の字」の形)、乗せた足の膝を外側に優しく押し下げます。股関節の内側(内転筋)が伸びる感覚を確認しながら30秒キープ。左右各2セット行います。
内転筋が硬くなると内股歩きが強まります。このストレッチで内転筋の柔軟性を高めることが、膝への負担軽減に直結します。
ストレッチ③ 腸腰筋ストレッチ(股関節前面)
片膝立ちになり、後ろ足の股関節前面(鼠径部から太ももの前)を伸ばします。背筋を伸ばしたまま、重心を前方にゆっくり移動させ、股関節前面に伸びを感じる位置で30秒キープ。左右各2セット行います。
腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)が硬いと骨盤が前傾し、股関節の動きが制限されます。腸腰筋のストレッチは股関節の可動域改善に非常に効果的です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 股関節が硬いかどうか、自分で確認できますか?
簡単な確認方法として「床に座ってあぐらをかく」という動作があります。両足の裏を合わせて座ったとき、両膝が床につく・または床に近い位置まで下がる方は股関節の外旋可動域が十分ある状態です。両膝が大きく浮いている方は股関節が硬い傾向があります。
Q2. 股関節のストレッチだけで膝の痛みが改善しますか?
ストレッチは改善の一部です。柔軟性の改善と合わせて、股関節外旋筋の筋力強化(クラムシェル・ヒップアブダクションなど)と、歩き方のクセの修正が必要です。「ほぐすだけ」では改善が限定的なことが多く、動き方を変えることがセットで必要です。
Q3. どれくらいの期間で変化が出てきますか?
毎日継続した場合、股関節の柔軟性は2〜4週間で変化が出始めることが多いです。膝への影響(痛みの軽減)は1〜2ヶ月程度で感じる方が多いです。ただし長年の習慣・筋力低下・骨の変形があるケースでは、専門家のサポートを受けながら進めることで改善が早まります。
「膝のリハビリを続けても改善しない」という方は、ぜひ股関節の評価を含めた全身的なアプローチを試してみてください。当院では股関節から膝まで一体的に評価・治療を行っています。
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この記事を書いた人

長山 航大(理学療法士)
整形外科クリニック勤務後、膝痛専門整体として独立。リハビリ10年の経験を活かし、大阪・西中島南方で膝痛の根本原因を追求する施術を行う。Noah Body Conditionセラピスト。